vanilla maple tea



 カナダのお土産にいただいた“お茶”である.

 成分はblack tea、malt、chicory等があるが、最も大きい成分はおそらくvanilla beanとmaple crystalだろう.

 ティーバッグ状になっているお茶を淹れると、濃い目の液体が数分で出てくる.そして、同時に辺り一面をバニラとメイプルシロップの香りが覆う.強烈だ.

 これはきっと猛烈に甘いのではないだろうか、と恐る恐る口をつけると、味自体はほとんどないといっても良い.ないわけではないのだが、フレーバーからくる期待感があまりに大きいために、ほんのりとした甘みがほとんどお湯を飲んでいるかのように感じられてしまう.


 もともと、バニラの香りと甘みの連合は人工的なもののはずだ.バニラビーン自体には甘みというものはなかったと思う.また、チョコレートやクリーム自体にもああした甘い香りはもともとはない.
 この二つをイメージとして自然に結合させてきたところに人間の味覚構成が人工的・社会的な構成概念である、ということが顕れており、そこに、人間の世界の解釈のようなものも見え隠れする.

 どうしても、この飲み物は味と香りがミスマッチに思えて仕方がない.

 そこで、仕方なく、香りのイメージにあった甘み(チョコレートなど)を一緒につまみながら飲み干すことになる.

 悪くはないのだが、これ自体で飲み物として完成しているという印象はない.


<完>
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