よく晴れた、あるおだやかな日の昼前のことだった。
それは終わってしまった。
突然のことだったのかもしれないし、実はもっと以前から誰もがうすうす感づいていたことなのかもしれなかった。
何が終わったのかは、実は誰にもわからなかった。だが、なにかとても大切なことが終わってしまって、もう決して二度と元のように戻ることはないのだ、ということだけは、どの人にもよくわかった。
道行く人々は、出会うとみな「終わりましたね」というあいさつをした。子供同士も「終わったね」と言い、顔を見合わせた。
終わってしまったことに対して、それ以上語る言葉もなかった。なぜなら、それはすでに終わってしまったからなのだった。
明日も明後日も、これからもずっと世界は続いてゆく。人々は何事もなかったかのように日々を暮らしてゆくことだろう。
しかし、本当は、ここから先はすべて、終わってしまった後のできことでしかないのだ。
<完>