サンタ・ラマ・ラウ(翻訳 江上トミ) | タイムライフブックス | 1974 | ****** | 詳細不明 |
「世界の料理」という一連のシリーズ本の一部らしい.古本屋で500円で手に入れたのだが,元の定価もわからない.元々は英語で「The Cooking of India(1969)」という本の翻訳.本書は2冊からなる.一冊は文字のみのレシピの記述であり,もう一冊は,祭や宗教などのインドの風俗にからめて料理を記述している(こちらにもレシピはあるが,主体は風俗の記述である).ただ,著者が記しているように「いくつかの例外はあるが,人口の約80%を占める農村の人たちの毎日の食べ物には触れなかった」ということらしい.
たとえば「自家製チーズとグリンピースのカレー煮」「ラージマ・ダルのトマト入りカレー煮」「蛤のカレー蒸し煮」「豚肉と臓物のマサーラ入り酢漬け煮」,また,ライタだけでも6種類,等々というぐあいで実にインドしている.また,単なるレシピというよりも,食材の扱い方から始まる.「ココナッツを買うときは,まず振ってみて,汁がいっぱい入っているかどうかを確かめる」とあるので,買う機会があるときはぜひそうしてみよう.また,マサラを練って作っている写真があるのも珍しい.
原著者はインド出身で,その後世界に住んだ経験がある.インドの風習や気候を解説してくれており,この本が書かれていた段階でも,やはり身分的な制度が現存していることがうかがえる.また,インドといっても北と南では相当に食べるものや食べ方が異なっているようだ.たとえば「インドでも北部の人たちは,南部の人たちが料理の中に手をすっぽり突っ込んで食べるのを途方もなく下品だという.逆に南部の人たちは,気難しい北部の人たちが,指の第一関節までしか食べ物に手をつけないのは愚かなことだという.」 日本以上に広い国土であるので,これは当然だろう.数十年前のインドの台所の様子もうかがえる.食器や銀箔など,インドの人々はどうして銀や銀色のものにこだわるのか,気になった.