060 | 王様のキッチン カレーの神髄 | 河手書房新社 | 1996 | ISBN4-309-95502-9 C9477 | 1200円 | レシピ 蘊蓄 店紹介 |
レシピを中心としたカレー総合書籍。きれいな写真つきの手順解説が特徴。
有名店の代表的なメニューのレシピを事細かに写真入りで解説している.で,
その冒頭が「志摩観光ホテルの伊勢エビカレー」というのだから大変で“これ
を教えられて,私にどうしろというのだ”という気になってくる.それはそれ
として、次が「新宿
中村屋のチキンカリー」,「大阪堂島のオリムピックのセイロンカレー」,
「代官山小川軒のインドネシアカレー」,「京橋ドンピエールの欧風カレー」,
最後に「南青山の志度のドライカレー」である.いずれも大変な手順を経て作
られているとわかるのだが,しかし店によってこだわる部分が変わっているよ
うだ.さらに, 次に、“カレーのことはインド人に聞け”とのことで、イン
ド人の経営するカレー店舗から、「六本木のラージマハール」のインド宮廷カ
レー,「南青山のビンディ」のインド家庭カレー,「恵比寿のアジャンタ」の
南部のカレー,「渋谷のナマスカ」のベジタリアンカレー,といったレシピが
たくさんある.どれもカラー写真が満載で、作っている途中の手順を親切に示
している。
また,後の段には「まかないカレー」として,通常は店のメニューには出ない
カレーメニューのレシピがある.それも「焼肉」「和食」「イタリア」と,一
見カレーと無関係に見えるお店である.また,熊谷喜八さんの「市販のルーで
10倍楽しむアイディアカレー」では、タイトル通り、普通に売られているカレー
ルーに炒めタマネギや香辛料を加えたりして新しい味を繰り出すレシピが4種類
掲載されている。カレーソースを一度ミキサーにかけてしまってまろやかにす
る、というのはなるほどと思った。ともかく、レシピという面において,相当
に盛り沢山の内容である.
レシピを紹介するところで,「志摩観光ホテル」「新宿中村屋」「オリムピッ ク」「小川軒」「ドン・ピエール」「志度」が紹介されており,また「隠れた 穴場のカレーショップ」として「築地の中栄」「吉祥寺のくぐつ草」「銀座の シオン」「自由が丘のMURA」「大阪堂島のインディアン」などなどがある.他 にも、「商売物をしのぐ“まかないカレー”」として五反田の「日南」。京都 河原町三条の「河繁」など。最後に,この本で取り上げた東京・京都・大阪・ 神戸のカレー店の住所と電話番号を示した一覧あり(1996年 のもの)。
嵐山光三郎さんの「カレーのご飯は何がいいか」で、カレーライス選手権 の話が出てくる。「中国料理の技をカレーに応用すると、絶妙の味になる」と のことである。また、森枝さんの「昔、カレーは漢方薬であった」で、世界各 国(イギリスや韓国,台湾も含めて)のカレーの写真を載せてくれている.そ れから鳥居美砂氏の「カレー賛歌」は、向田邦子、池波正太郎、石坂浩二らの エッセイから、カレーに触れられた部分を選び,それらをカレーの種類によっ て分けている.石坂浩二が、自作するほど のカレーパン好きだとは知らなかった。日本人は実にいろいろとカレーにこだ わりを持っていて,それを楽しんで食べているということがよくわかる.また, 阪急の駅ビルのカレーが一日25000食売れた,という話のネタもとが加藤秀俊だっ たということがここでやっとわかった.いくら駅ビルとはいえ、空恐ろしい数 である。