069 | スパイスのサイエンス | 武政三男 | 文園社 | 1990 | ISBN4-89336-050-7 C5077 | 1500円 | スパイス解説 |
武政先生のスパイス解説本。いろいろなことがとても科学的に解説され
ていて、とても詳しい。情報量多し。「スパイス・ハーブ」について、きちん
とした知識をもつための基本書の一つ。
なお、この続編である「スパイスのサイエンス part2」もある。
写真はないが,所々にさし絵があり、スパイスの解説を文章で詳しく記述
してくれている.解説部分が見開きで1項目となっており,読みやすい構成で
あるのも特筆.
最初に「スパイスをめぐる誤解・偏見・勘ちがい」として、実は我々は日常生
活で数多くのスパイスを利用していること、スパイスは決して辛いだけのもので
はないことなどが挙げられている。この本の定義としては「主として熱帯、亜熱
帯、温帯地域に参する植物の種子、果実、花らい、柱頭、葉茎、木皮、根塊など
から得られるもののなかで、刺激性の香味を持ち、飲食物を風味づけたり、着色
したり、食欲を増進させたり、消化吸収を助けたりする働きのあるものをスパイ
スと総称する」である。この定義によって、実は日本の自然にもいろいろなスパイ
スがあることがわかる。次いで、「スパイスの有効成分を科学する」では、スパ
イスの4つの基本機能(賦香作用、辛味作用、着色作用、矯臭・脱臭作用)が挙
げられ、それらの機能を持つ“精油”成分についての解説、植物による含有部位
の相違など、詳細に語られる。「精油の含有量は、一日のうちでも朝、昼、晩と
微妙に違います。一本の草の上部の葉と下部の葉とでも違います。また、一枚の
葉でも、葉の先端部分と元の部分とでも異なるし、さらに曇天が続いたときより
も晴天が続いたときのほうが、精油が多く含まれることも知られています」とな
ると、もう我々素人は何も言えなくなる。プロはすごい。
「スパイスを使いこなす基礎知識」では、その精油成分の特徴から、どのタイミ
ングで料理に加えるか、芳香を強めるにはどうするか、成分を有効に取りだす方
法はどういったものか(油、アルコール、酢につける)などを解説している。
次いで、各種スパイスの解説に入る。ここではスパイスを「辛い」「肉の臭み
消し」「香りづけ」「着色」に分け、各々に合ったスパイスを見開き1ページで
説明している。ガーリック、オニオン、ナツメグ、クローブ、セージ、など、合
計約30種類。
次に応用編として、ブレンドスパイスについて触れ、さらに「プロ
のテクニック」として、スパイスの効果的な利用方法について解説している。
たとえば、バニラエッセンスはケーキを焼くときに揮発してしまうことが多いの
で、クローブやナツメグなどの粉末を少しだけ加えて、それに近い芳香を加え、相乗効
果で全体のバニラ臭を強くしている。また、桜の葉にはクマリンが糖と結合した
配糖体ができていて、それを塩水にひたしておくと、酵素の作用でクマリンがで
き、それが甘さの感覚を高めている、そうである。また、スパイスを利用した減
塩効果、また薬膳やハーブの効果についても触れているが、「その効果が知られ
ている成分が含まれている」という程度に考えたほうが無難とのことである。た
しかに、なにごとも過ぎたるは及ばない。