「中の人などいない」
この世界で、そう言いきれる人間は数少ない。
アニメーションないしゲームにおいては、そのキャラクターを演じる声優が存在する。もちろん、キャラクターはキャラクターであって、声優は声優である。
それはわかっている。
わかっているはずである。
だが、わかっていても、ある種の若者たちはそこに夢を見るのだ。
アニメーション第1作目放映の直前に「前夜祭」と称したイベントが
発生していた。これは、アニメーション放映の前の景気づけのようなものである。
12人の妹を演ずる声優を一同に集め、相応の歌や台詞を語ってもらう、という
代物であった。
その映像の一部が残されていたのを拝見した。
見終った。
世の中、どうしてこんなに辛いことばかりなんだろうと、思った。生きているというだけでも大変なことなのに、どうしてこんな苦行をしなければならないのだろう。
この件については、もうこれ以上述べることはできない。おそらくは心の
痛みに耐えられないであろうためである。
ただ「どうせなら歌はプロに任せろ」と強く思ったことだけはお伝えしておく。
なお、アニメーションの第2期においては、この「歌のプロ任せ」が大きく質の向上に貢献していたことは公然の秘密である。