この作品の主たる内容である「雑誌連載」である。
もともと、この企画は紙上ゲームのキャラクター群の人気を出すために、原作者
である公野・天広コンビの構成するこの紙上連載がメインだった。
したがって、これこそが本体であり、後のアニメーションやゲームと区別する
ため、以下『連載』と称する。
この『連載』は、いくつかの期間に別れる。
最初の期間は、いわばお試し期間であった。1999年3月号に、妹9名の姿を描いた小さなイラストレーションと、彼女たちの一人称視点からの兄に対する思いを綴った小文が掲載された。
当初は連載は2ヶ月に1度、という隔月頻度を予定していたらしい。しかし、この最初の顔見せおいてすでにキャラクターたちに対する熱く野太い声援が殺到し、勘の良い編集部は即座に連載を毎月に切り替えた。
その翌月から、数名の妹がまとまったイラストレーションが2、3点ずつ掲載されるようになる。これは連載としてカウントしないことが多いが、強いて言うなら第0期である。
本番が始まる。
毎月一人の妹に焦点を当てて、毎月3枚のイラストシリーズになる。そしてそれに付随する(というより、イラストがこれに付随する、と言うべき)兄に対する想いのたけを、ダイヤモンドの輝度とヘロインの純度でたたき込む“驚異の独白”。この二つが絶妙のバランスで組み合わせられて読者に公開される。第1期である。
この頃から、連載である『電撃G'sマガジン』の表紙が、天広直人描くところの『シスタープリンセス』に変わる。
雑誌も読者も、もう引き返せない。
1年後、新シリーズの要として、海外からあらたに3名の妹が補充される。ドイツ、
フランス、イギリスというヨーロッパ各国からの招集であった。アフリカや南米、
中近東はもとより、なぜか中国やアメリカ、ロシアからも来なかった。その理由
はわからない。いっそのこと、アフガン・イラク・北朝鮮という選択もあったの
ではないかと思われるが、採用されていない。
次に、断片としてのイラストではなく、一つのショートストーリーとしての体裁
のシリーズが開始された(第2期、オリジナルストーリーズ)。妹の視点からな
るこの一連の連載において、公野櫻子の異才は冴え渡り、天広直人のイラスト
レーションはさらに美麗になる。
なお、この頃、彼の画集も発売された。5000円以上の、このジャンルでは高額の
画集ではあったが、相応によく売れている。
さらに、雑誌連載とは別に、12名のキャラクターを独立させ、一人につき一冊の
短いストーリー集『キャラクターコレクション』が発売された。
前代未聞である。一つの作品内の12名という多数のキャラクターに対して、一冊あたりは薄いとはいえ、各々一冊の本が出るのである。トータルの厚みとしては相当なものだ。
内容的には、妹一人称視点の兄に対する思いを主題とするショートストーリーをいくつかまとめている。オリジナルストーリーズと似ているが、もう少し“読ませる”内容である。少女小説ないし童話的な体裁をとり、ファンタジーといっても差し支えないようなものである。気のせいかもしれないが、書き手の中身も微妙にそれまでと違っている印象すら受ける。
とはいえ、それまで連載の特徴である、悪意の不在や嫉妬のなさは受け継がれている。それにところどころ天広直人の水彩のさし絵が入り、全体として大きなお兄さんたちに向けた「萌え文学作品」のような体裁をとっていた。
アニメーションが始まる直前には、それまで個別に出演していた妹たちが、数名まとまって登場する連載が開始された(第3期 ポケットストーリーズ)。これはおそらくアニメーションとの連動を狙ったものかもしれないが、しかし、内容的にかけ離れていたため(というより、アニメーションがあまりに従来の原作から離れた独特な作りをしたため)結びついたものとは見なされなかった。
その連載の次に、再び妹一人一人が独立したシリーズが開始される。これは、
妹から兄に向けての手紙、という体裁をとった連載であった(第4期)。内容
的には、第2期の連載と似ている。
これらの連載は、それ自体で独立した意味を持っていた。しかし、読者の 反応は、次の「誌上ゲーム」とそれに付随する読者投稿において際だっていた。